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内戦になりそうでならないウクライナ


2014年4月18日   田中 宇 「田中宇の国際ニュース解説」より引用

 
4月15日、ウクライナ軍が、ロシア系国民が反政府運動を強める東部に進軍を開始した。

軍の特殊部隊は、南東部の中心都市ドネツクの北方にある町クラマトルスクの飛行場を反政府派から奪還し、その近くの町スロビャンスクで占拠されていた行政庁舎も奪還した。

ウクライナ政府は、死者は出なかったと発表したが、ロシアの報道では銃撃戦で反政府派4人が殺された。

 これら東部のいくつかの小さな町で、ウクライナ軍は、公的施設を占拠している反政府派を排除した。

いよいよ内戦が始まるかに見えた。

しかしその後2日たっても事態は膠着したままで、軍はドネツクなど東部の大きな町を攻撃しないでいる。

ドネツクなどで公的施設を占拠している反政府派はその間に、占拠している庁舎の周りに何重もバリケードを構築し、軍が襲撃しにくいように要塞化している。

ウクライナ当局は、最後通牒を発しながらも、庁舎が要塞化していると言って襲撃を躊躇している。

 
実のところ当局は、東部に派遣した軍の部隊に対し、大きな町についても襲撃の命令を出していた。

しかし、たとえばスロビャンスクに対する襲撃を命じられた300人の部隊は、占拠されている庁舎を襲撃して奪還するため、6台の装甲車で町の中心部まで行ったところで、数百人のロシア系市民に囲まれて身動きがとれなくなり、市民に発砲できず何時間かにらみ合いを続けた後、部隊は庁舎を襲撃するのをあきらめた。

反政府勢力は、装甲車を置いて行く条件で、部隊の兵士に町から出て帰還することを許した。

兵士たちは、装甲車を置いて立ち去ったり、反政府側に寝返って庁舎占拠に合流したりした。

 
上記の展開は、ロシア側の報道によるものなので、ロシアに都合の良い誇張が入っているかもしれない。

しかしウクライナ政府は6台の装甲車が反政府側に奪われたことを認めつつ、どのように奪われたか経緯はわからないと言っており、ロシア側の報道内容を半ば認めている。(米側に都合の良い誇張が入っているかもしれない)

米国のAP通信は、「露系市民の群衆が装甲車を取り囲んで動けないようにした後、ウクライナ軍よりすぐれた武器で重武装した露系民兵がやってきて脅し、兵士を降参させて装甲車を奪った」と報じている。

露系民兵は重武装していたとしても歩兵だ。

ウクライナ軍の装甲車はろくな武器を装備していなかったことになる。

 
このAP電によると、露系市民が装甲車を奪ったのはスロビャンスクだけでなく、14台が奪われたショルキノ(Pchyolkino、スロビャンスクの南にある町)など、東部の10都市で、似たような経緯で軍の装甲車が市民に奪われ、軍は襲撃や庁舎奪還に失敗している。

襲撃に失敗しただけでなく、乗っていた(露系?)兵士たちが反政府側に寝返る事態が相次いでいる。

軍は、東部の各地に数台から20台ほどの、装甲車やバスに乗った部隊を送り込んだようだが、これらの多くは、露系住民の妨害策に阻まれ、襲撃できないまま現地で解散させられている。

 
ドネツクなど東部の町では、ウクライナ空軍の戦闘機やヘリコプターが、威圧的な低空飛行を続けている。

それだけを見ると、今にも本格的な鎮圧(侵攻)が行われそうだが、鎮圧行動に不可欠な地上軍は、奪われた装甲車の部隊以外には目撃されていない。

空軍は威圧飛行するだけで空爆せず、心理戦に徹している。

ウクライナ政府は、本格的な東部襲撃を躊躇しているのでなく、襲撃を試みたものの失敗し、装備や兵士など地上軍の戦力をかなり失い、襲撃を拡大できない状況になっている。

 
ロシア国境に近く露系住民が大半のドネツクでは従来、ロシアのテレビ放送が視聴できたが、ウクライナ政府が極右政権に転じた後、ロシアのテレビ放送が見えない状態が数週間続いた。

しかし今週はじめから再びロシアの放送が見られるようになった。
 
ドネツクなど東部のいくつかの町では、露系住民の反政府勢力が、役所や放送局、空港、鉄道、警察や諜報機関の事務所、浄水場など、公的な施設に次々と群衆のデモ隊を派遣して占拠し、接収している。

ロシアのテレビが見られるようになったのも、そうした占拠(接収)行動の結果と考えられる。

ドネツクなど東部の主要都市に対する、ウクライナ中央政府の支配力が急速に低下している。

東部は実態的に、ウクライナから独立しつつある。

 
露系が多い東部の黒海岸の町マウリポリでは、ウクライナ軍が露系の反政府勢力に向かって発砲して銃撃戦になり、3人の露系市民が殺された。

これだけ見ると、ウクライナはいよいよ内戦か、と思えるが、詳細を見ると話が違う。

マウリポリにはウクライナ軍の基地がある。

市内の露系住民は、付近の他の町の市民が、数百人の群衆となって次々と中央政府の施設の前に押し掛け、中にいる中央政府の係官に圧力をかけて明け渡させ、占拠していると聞いて、自分らも市内の基地に押し掛けることにした。
 

しかし、2百人の露系市民が基地の門前におしかけ、基地内のウクライナ軍兵士と何時間も押し問答しているうちに夜になり、闇夜にまぎれて基地の中から実弾が発砲された。

露系市民の中の武装者が撃ち返して銃撃戦となり、3人が死亡、15人が負傷した。

マウリポリの殺傷は、露系市民が占拠する施設をウクライナ軍が襲撃したのでなく、軍の基地を市民が占拠しようとして、軍の側が防御している間に起きた。
 

ウクライナはソ連崩壊で独立した後、親露と親米欧の間を行き来しつつ、両方から経済支援を受けてきた。

ロシアも米欧も、ウクライナ自身が強い軍隊を持つことを好まなかったため、ウクライナ軍はないがしろにされ、装備は古くて少なく、防衛費も足りなかった。

3月にロシアがクリミアを併合し、クリミアに駐留していたウクライナ軍が撤退することになったとき、軍用車の多くはバッテリーが干上がり、ガソリンもなく、撤退ができなかった。

しかたがないので、ウクライナ新政権を支援する大金持ちの州知事(Ihor Kolomoysky)が500万ドル出してクリミアのウクライナ軍にバッテリーやガソリンを供給し、何とか撤退できた。
 

こんな状態だからウクライナ軍は士気も低く、戦える状態にない。

ウクライナ新政権は東部の反政府勢力を「テロリスト」と呼び「これは(米国が好む)テロ対策だ」と言って何度も米国に軍事支援を求めているが、ロシアと政治的に対立するのは良いが 軍事対決を避けたい米国 は、武器以外の医薬品、浄水器、軍用食、ヘルメットなどしか供給したがらない。

外交的な発言だけをたどると、ウクライナは今にも内戦になりそうに見えるが、実のところ内戦になりにくい。

 
混乱が続く中、ウクライナ新政権は経済維持に不可欠なロシアからの経済支援を切られ、財政破綻に向かっている。

米国の格付け機関がウクライナを格下げし、通貨フリブナに対する国際信用が落ちてインフレがひどくなり、ウクライナ中央銀行は公定歩合を6・5%から9・5%へと大幅に引き上げた。

米欧はウクライナの経済崩壊を看過している。

 
4月17日、ジュネーブで米欧露ウクライナによる4者協議が行われた。

米欧の仲裁により、ロシアとウクライナが協約を結び、ウクライナ政府は武力による東部鎮圧や反政府勢力の逮捕を行わない代わりに、ロシアが東部の露系住民を説得して公的施設への占拠を終わらせ、露系住民を武装解除する道筋が決まった。

合わせて、ウクライナ政府は地方自治拡大の憲法改定を行って東部の露系住民の自治や住民投票の実施を認める代わりに、ロシアはウクライナ政府がやりたい5月25日の大統領選挙に反対しないことも合意した。

 
合意は、ロシアが求めていた条件の多くを含んでおり、事態はロシアの優位で進んでいる。

合意締結後、ウクライナ政府は「合意にとらわれず、東部の公的施設を占拠する反政府派を排除していく」と発表した。

しかし、すでに見たように、ウクライナ政府は反政府派を排除する手段を持っておらず、発表は口だけだ。

 
米オバマ大統領は「ロシアが東部の占拠をやめさせないなら、対露制裁を強化する」と発表した。

ロシアに説得されても東部の露系住民は占拠をやめないかもしれないが、もともと米議会には対露制裁を強化したい議員が多く、ロシアが何をしようが米国は対露制裁を強めそうだ。

ロシアは、米欧に制裁されるほど、米欧以外との諸国との経済関係を強めて対処し、長期的に、米露にはさまれた欧州の不利益が増す。

 
ロシアは最近、中国の新疆を経由してインドに石油ガスを送るパイプラインを敷設する計画を立てており、石油ガスを欧州でなくアジアに売る態勢に移行している。

露中印パイプライン計画は、インドを上海協力機構(中露の同盟体)に参加させる構想と連動しており、政治的なBRICSの結束や覇権多極化を加速する。

 
今後、ウクライナの危機を緩和しそうなのは「美しすぎる」元首相、ユリア・ティモシェンコの存在だ。

これまで2度、ウクライナ首相をつとめ、その後汚職で投獄されていた彼女は、ウクライナ政界の反露勢力の一員で、今回の極右政権の樹立時に超法規的措置によって釈放されて新政権の要人となり、5月の大統領選挙への出馬を表明している。

彼女は反露勢力の一員でありながら、ロシアのプーチンと仲が良く、首相時代に対露関係を改善した。

彼女は「ガス・プリンセス」と呼ばれ、ロシアからウクライナを経由して欧州にガスを安定供給することを約束する代わりに、国庫に入るべきガス輸送収入の一部を抜きとって着服し、政治資金にしている(その罪で逮捕投獄されていた)。

 
彼女が5月の選挙で勝って大統領になると、表向きウクライナは反露政権のまま、ロシアとの関係が実質的に改善し、欧州へのガス供給も(資金が中抜きされつつ)安定する。

ウクライナが本格内戦になる可能性がなくなったわけではないが、ウクライナ危機は、米露が対立して第三次世界大戦になりそうな勢いで始まり、談合や汚職にまみれた親露政治家が再台頭する茶番劇で終わるのかもしれない。


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