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ついに「属国に戻れ」と韓国に命じた中国

鈴置 高史 2014年5月29日(木) 日経ビジネス


中国が韓国に「属国に戻れ」と命じた。韓国の「離米従中」もここまで来たか、と思わざるを得ない。読者の疑問に答える。


「朝貢しろ」

「中国が韓国に『朝貢しろ』と言い出した」と聞きました。

鈴置:5月15日に朝鮮日報が「中国の朝貢論 日本の嫌韓論」(韓国語)という記事で報じました。筆者は政治部のぺ・ソンギュ次長。日本語版にも載りましたから、こちらでも結構、話題になりました。

 日本語版の無料サイトは期限切れで、同紙会員以外は読めなくなっています。韓国語版では有料セクションに載りました。そこでこの記事の「朝貢要求」の部分を以下に要約します。

少し前、韓中の政府間の定期協議で中国の当局者が韓国政府の関係者に対し「朝貢外交に戻ったらどうか」と探りを入れる発言をしたという。

朝貢とは中国周辺の国が中国に定期的に使節を送り貢物を納める代わりに、中国から安全を保障され貿易する前近代的な国際関係だ。

昨年、中国の一部学者が主張し始めた「朝貢外交復活論」を中国の当局者が口にしたのは初めてだ。公式的な発言ではないにしろ、当局者が口にするにはあまりに不適切だ。


関ヶ原の戦いの前

属国に戻れ、ということですね。

鈴置:その通りです。中国の歴代王朝は1895年に日清戦争で敗れるまで、朝鮮半島の王朝を冊封体制に組み込んでいました。長い間、中国人にとって朝鮮は属国、朝鮮人にとって中国は宗主国だったのです(注1)。

(注1) 冊封体制や「朝貢国」「属国」に関しては京都府立大学の岡本隆司准教授が「『対馬は韓国のものだ』と言い出した韓国人」「『中華世界』復活を喜ぶ韓国人」で分かりやすく説明している。

 朝鮮は1910年に日本の植民地となったのですが、日本が負けたために1945年に独立、同時に南北に分かれました。韓国は朝鮮戦争(1950-1953年)を機に米国と同盟を結び、その勢力圏に入りました。

 韓国は米国のもとで経済成長に成功しました。そこに今、中国が「朝貢しろ」つまり「米国の子分はやめてこっちに戻れ」と言い出したのです。



なぜ今、中国が朝貢を要求するのでしょうか?

鈴置:米中の囲い込み合戦が本格化したからです。関ヶ原の戦いの前を想像下さい。徳川方と豊臣方はそれぞれ全国の大名に対し、自分の陣営に参加するよう求めました。多数派工作です。

 今、アジアはそれと似た状況です。対立を深める米中は各国の取り込みに動いています。米国以外は選びようのない日本に住んでいると、その空気が分かりにくいのですが。

 4月下旬のオバマ大統領のアジア歴訪は、米国の多数派工作そのものでした。日本、フィリピンとは同盟強化を約束しました。中立国であるマレーシアも訪れ、経済面の関係拡大を訴えました。もちろん、中国を意識したものです。


失敗した米韓首脳会談

韓国も訪れ、朴槿恵(パク・クンヘ)大統領と会談しました。

鈴置:米国からすれば、米韓首脳会談だけは失敗に終わったと言っていいと思います。米国が「日―米―韓」の3国軍事協力の強化を求めたのに、韓国は完全な言質を与えなかったからです(「オバマの前で『中国が頼み』と言い切った朴槿恵」参照)。

 韓国が米国の要求を逃れたのは、もちろん中国の怒りを買わないためです。3国軍事協力は対北朝鮮用ということになっているけれど、誰が見ても本当の狙いは中国包囲網づくりです。

 中国はオバマ大統領の訪韓に対抗し、習近平主席を6月にもソウルに送ります(「オバマが帰ると即、習近平に秋波を送った朴槿恵」参照)。ここで一気に韓国を取り込む作戦と思われます。

 一方、米国は5月31日にシンガポールで日米韓3国の国防相会談を主宰、実質的に軍事協力を進める考えです。

 中国はその前の5月26日に王毅外相をソウルに送りました。同日の聯合ニュース「朴槿恵大統領、王毅中国外相を接見」(韓国語)は以下のように報じました。


「アジアから米国排撃」に祝意

朴槿恵大統領は、習近平主席が5月20―21日に上海で催した第4回アジア信頼醸成措置会議(CICA)首脳会談に関連し「成功裏に開催されたことをお祝いする」と(王毅外相に)語った。
 CICAは中国とロシア中心に安全保障問題を話し合う会議。日本や米国がオブザーバーであるのに対し韓国は正式メンバーで、今回は統一相を送っています。

 主催国、中国の習近平主席は閉幕後の記者会見で「アジア諸国は自身の協力により、アジアの安全保障を実現する能力を持つ」と語りました。要は米国のアジア関与政策を排撃するよう各国に呼びかけたのです。

 中国はCICAを「アジアからの米国締め出し」の武器に育てようとしています。それを韓国の大統領が中国の前で持ち上げたのです。韓国に対する疑いを、米国はさらに深めたに違いありません。

 王毅訪韓は習近平訪韓の準備のためでしょう。しかし「日米韓3国の国防相会談への牽制」つまり、韓国に対し「中国包囲網に参加したら承知しないぞ」と脅しに来たのだと報じた韓国メディアもあります。



さすがに韓国人も「不快」

アジア、ことに朝鮮半島を巡って、米中が激しい陣取り合戦を始めたのですね。

鈴置:まさしくそうです。「朝貢要求」も、めまぐるしい動きの一環として読むべきと思います。

「属国に戻れ」との要求に対し、韓国人はどう反応したのでしょうか。

鈴置:再び「中国の朝貢論 日本の嫌韓論」(韓国語)という記事から引用します。

韓国政府関係者は「過去の朝貢外交の時代のように、両国が緊密な関係を築けばお互いに利益になる、とのニュアンスだった。真剣な話ではなかったが、中国の指導層の認識や内心が表れたようで、不快だった」と語った。
 一言で言って、韓国人の思いは「不快」ということでしょう。ただ、注目すべきは「朝貢」という上下を示す単語が「不快」なのであって「中国の勢力圏に来い」と言われたことを不快に感じてはいないことです。

 むしろ、露骨な二股外交を展開し、米中双方から果実を得ようとしている韓国からすれば「中国から勢力圏に招かれた」ことは喜ばしいことなのです。



あくまで二股外交を

 ただ、中国から「朝貢」という言葉まで使われ、上から目線で要求されるようになったことに韓国人はショックを受けたのです。

 あまりに中国に近づき過ぎて、米中間での外交バランスを欠いたからだ、という反省が韓国の外交当局にも生まれたのでしょう、記事は以下のように結ばれています。

今からでも中国、日本との関係を立て直し、長期的な均衡外交戦略を打ち出すべきだ。100年前に朝鮮半島が直面した状況は、決して過去の歴史として忘れるべきではない。
 関係を立て直すべき対象に「日本」を挙げていますが、それは文脈の都合であって「日米など海洋勢力」と考えればいいと思います。

 「100年前の状況」とは、今日は日本、あすは中国、次はロシア――と目まぐるしく頼る国を替えたあげく、失敗した朝鮮王朝を指します。


この記事は、中国から「属国に戻れ」と脅されたのに、米国側に完全に戻ろうと主張しているわけではないのですね。

鈴置:そこが重要な点です。中国に大きく傾き過ぎた二股外交を、微修正しようというに過ぎないのです。記事はあくまで「均衡外交戦略」つまり「二股外交」を貫こうと主張しています。


韓国には上から目線が効果的

それにしても「朝貢」などと、韓国人にとって不快な言葉を持ち出したら反発されて、中国にとって逆効果ではないでしょうか。

鈴置:中韓の役人の会談に同席したわけではありませんから、中国側発言の意図は分かりません。しかし、敢えて「朝貢」を使った可能性もあると思います。

 なぜなら中国人は「韓国人に対しては強圧的な姿勢で臨んだ方が効果がある」と信じているからです。彼らはしばしば「米国人や日本人は韓国人に優し過ぎる。叱り飛ばさないから、あんな小国に舐められるのだ」と言います。

 実際、中国人は韓国人に対しては上から目線で接することが多い。それに対し韓国人も不快感を持ちながらも、従ってしまうのが普通です。

 「朝貢」記事に寄せられた韓国人読者の書き込みを見ても、それがよく分かります。掲載翌日の5月16日までに96本の書き込みがありました(それ以外に7本が管理者によって削除)。多くが「無礼だ」「断交だ!」といった、中国に対する反発の表明でした。

 中には傲慢な中国に対抗しようと訴えた書き込みもありました。しかし米国との同盟強化で乗り切ろうと主張した読者はたったの3人だけでした。

 一方、15人が防衛力強化を訴えました。これには核武装論を含みます。ただ、同盟を欠いた「自主国防」だけで中国に対抗できないことは、韓国人自身が一番知っています。核武装に関しても、米国も中国も韓国に許す可能性は限りなくゼロに近い。


景気づけの核武装論

鈴置:対北朝鮮ならともかく、対中国という意味では自主国防論は景気づけに叫ぶ感情論に過ぎません。結局、書き込みで、中国に対する現実的な対抗策はほとんど語られなかったのです。

なぜ、国を守るのに最も現実性の高い、米国との同盟強化に動かないのでしょうか。日本やフィリピンのように。

鈴置:まず、かなりの韓国人が米国は当てにできないと考え始めたことがあります。さらに米国に代わって中国が覇権を握ると見なし始めました(「もう、3割の韓国人が『中国に鞍替え』」参照)。

 凋落する米国との同盟に国の未来を賭けるわけにはいかない。そして中国から「米国との同盟を強化するな。中国包囲網に参加したと見なす」と脅される以上、それに従うしかない、と韓国人は考えるのです。

 だから中国人が「朝貢」という韓国を見下す単語を使っても、日本人が考えるほどの副作用はありません。それどころか脅しの効果を高めていると言えるのです。

 ちなみに、書き込みでは「すでに属国に戻っている」「韓国人には事大主義のDNAがある」「韓国の外交官が無能だからこうなる」といった、属国回帰を愉快ではないけれど、受け入れざるを得ない現実として認めた人が16人もいました。

 朴槿恵政権の「離米従中」外交に大きな反対が起きないのは、韓国人の心に潜む、こうした根深い属国意識があるためでしょう。

中国にサービスし過ぎ

昔、属国だったからといって今、それほど中国に気を使う必要はないはずです。ここが分からない。

鈴置:確かに韓国の従中ぶりは異様です。米国に守ってもらっているのに、米中の意見が異なる時はすべて中国の言うことを聞くのですから。

 東アジアの国は皆――韓国とカンボジアを除いて――反中同盟に加わるか、中国を警戒するようになりました。その中で韓国は、必要以上に中国に吸い寄せられている。

 日本のある外交官は「すでに韓国は二股外交からも逸脱している」と首をひねります。米中を両天秤にかけるつもりなら中国にあんなにサービスしてはいけない、というのです。

 必要以上に中国の言うことを聞けば、中国はますます韓国を属国視して、過大な要求を突きつけますからね。実際、そうなっていますし。

 例えば、2013年の朴槿恵大統領の初訪中前の「人文同盟ブーム」。あれだけ中国にひれ伏せば、韓国は本気で冊封体制に戻りたがっている、と中国人は考えてしまうでしょう(「117年振りに韓国を取り戻した中国」参照)。


鈴置:実は中国人も韓国の異様な対中接近ぶりに驚いているフシがあります。2010年に近未来小説『朝鮮半島201Z年』を書きました。


朴槿恵の間に属国化

韓国の「離米従中」を言い当てた本ですね。

鈴置:当時――たった4年前ですが、中国人からも「こんなことはあり得ない。我々中国人だって中国を胡散臭い国と思っているのに、わざわざ米国から離れてこちら側に寄るなんて……」と言われたものです。

 しかし、朴槿恵の韓国が予想外にどんどん接近して来るものだから「何だか分からないけど近づいて来る」と不思議がりながら「とにかく可能な限り引き寄せておこう」「米国側に後戻りできないように歯止めをかけよう」と動き始めたのです。

 さきほど「なぜ今、中国が朝貢を要求し始めたか」という質問をいただき「今は関ヶ原の前だから」と答えました。もう1つの答えがこれ――「朴槿恵政権のうちに引き寄せようと中国が考えている」です。

 朴槿恵大統領の任期はあと4年もありません。次の政権がこれ以上に離米従中である可能性はほとんどない。これを考えると、中国にとって「今」しかないのです。


閉鎖回路に陥った韓国

それにしても、朴槿恵政権がこれほどに異様な離米従中政策に走るのはなぜでしょうか。

鈴置:それは謎です。様々の説明があります。ただ、この政権が「閉鎖的な意思決定回路」に陥っている可能性が高いのです。

 韓国には、朴槿恵大統領は「反米反日」との見方が根強くあります(「朴槿恵に『踏み絵』迫るオバマ」参照)。

 そこでゴマすり官僚が大統領の好みに合わせて「離米従中」政策を正当化する情報――例えば「米国経済は先が暗く、あと数年で中国に追い越される」といった情報だけを上げることになる。

 すると大統領もそれに沿った決断を下し、すると下僚はますますそうした情報しか上げなくなって……という悪循環に陥っているように見えます。

鈴置:最近、韓国メディアは――親・朴槿恵紙さえも「大統領は人の話を一切聞かず、報告書だけを読んで物事を判断している」と報じるようになりました。もちろん危機感を込めてです。

 今回の旅客船「セウォル号」沈没事件でも「都合の悪い情報は大統領に上がらない」という事実が確認されました。

 修学旅行の高校生ら多くの乗客が船の中に閉じ込められているというのに、大統領は「救命胴衣を付けているのになぜ、助けられないのか」と問いただしたのだそうです。

 「乗客は救命胴衣を付けて海に逃れた」という情報しか聞かされていなかったのです。トップの判断が必要な大惨事というのに、役人は叱責を恐れて耳触りのいい話しか報告しなかった、と韓国紙は批判しました。外交で同じことが起きても不思議ではありません。



朴槿恵に吹き込む習近平

しかし、メディアは中国傾斜を批判し始めました。大統領はそれらを読まないのでしょうか。

鈴置:確かに、冒頭で話題にした「中国の朝貢論 日本の嫌韓論」(韓国語)といった記事が載るようになりました。「このままでは中国に呑み込まれる」と恐れた外交当局の役人が、大統領に直訴するつもりで朝鮮日報に書かせた感じもします。

 米国との同盟堅持を主張する趙甲済(チョ・カプチェ)ドットコムは、かなり前から「米国側に戻れ」「中国に騙されるな」と書いています。

「離米従中」を痛烈に揶揄するイメージ写真を掲載した、海洋勢力派のネットメディアですね。

鈴置:そうです。ただ、韓国のある大物保守人士は「大統領はもともと新聞も本も読まない人だ」と言います。彼らの直訴が成功するかは分かりません。

 1つ言えるのは、内憂外患に直面した政権が迷走を始める中、中国の影響力が増していることです。中国は外相から国家主席までソウルに乗り込み直接、朴槿恵大統領の耳に「韓国が進むべき道」を吹き込むのですから。

 実際、5月26日に訪韓した、王毅外相は中韓外相会談の冒頭「国際情勢の深刻な変化により、中国は韓国を緊密な協力同伴者として選択するつもりだ」と述べました。

王毅が「中国を選べ」というなら

 この「選択」発言に関し、中央日報は5月28日「バイデンの『べッティング』vs王毅の『選択』……韓国には圧迫であり機会」(日本語)で以下のように書いています。韓国人の本心が垣間見えて非常に興味深いので、ポイントを翻訳します。

韓国をパートナーに選択するのだから韓国もうまくやれ(訳注・中国を選べ)、というひそかな圧迫が込められた言葉と解釈できる。南・東シナ海問題で日米側に傾くな、という本心も込められているのだろう。

昨年12月、バイデン米副大統領が朴槿恵大統領に「米国の反対側にベッティング(賭ける)のはよい賭けではない。米国は韓国に賭ける」と語った。

米中がそれぞれ「ベッティング」「選択」を語ったことは韓国に対する圧迫であろうが、同時に韓国の「値段」が上がったのだとも言える。

これを機会として活用する戦略的な対応を模索する必要がある。米中の間で綱渡りしながら、北の核問題の解決の糸口を見つけることもできる。戦略的な曖昧性を通じて均衡者の役割を果たすこともできるのだ。


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