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産経新聞 2014.9.10 15:30

旧ソ連諜報機関KGB(国家保安委員会)に極秘情報を売り「米国益に最大の損害を与えた米史上最悪のスパイ」と呼ばれた米海軍上級准尉ジョン・ウォーカーJr.受刑者が8月末、米連邦刑務所で死去した。77歳。訃報に接し、KGB女性間諜の罠=ハニートラップにより脅迫されていた邦人企業の日本人モスクワ駐在員K氏を思い出した。ウォーカーと一つ違いの78歳になっていようが、取材した1987(昭和62)年、K氏は50歳代前半だった。「スパイだと途中で気付いたが、彼女の魅力に自分を抑えられなかった…」と、うっすら涙を浮かべ、絞るように発したか細い声が記憶に残る。ウォーカーはカネ(報酬100万ドル以上説アリ)欲しさ故に自らKGBに機密を持ち込んだが、K氏は「甘い罠」にはまり恐ろしくなり自首した。ウォーカーは家族を巻き込み国を売ったが、K氏はできる限り家族に隠そうとした。一見性格が異なる日米2つの事件は、一本の見えない線でつながっている。(SANKEI EXPRESS)

ソ連が100万通解読

 ウォーカーが旧来型暗号機KL-47の規約を複写し、“実力”を売り込むべく在米ソ連大使館に持ち込んだのは67年。以来FBI(米連邦捜査局)が逮捕する85年まで、米海軍の暗号電報100万通がソ連に解読された。KGB用意のカメラで写した情報資料↔現金の授受は、双方がブツをおのおの指定地点に置き、互いに顔を合わせることなく持ち去る手口《デッド・ドロップ》に依った。

退役を見越し、現役の海軍上級曹長や米海軍艦艇のオーバーホール会社に勤める兄の退役海軍少佐をリクルート。空母乗組員の末っ子も巻き込み、一味は米ソ開戦時の対ソ攻撃基本計画という、超弩級情報まで盗撮し持ち出した。他に、米軍基地や空母から、新型暗号機の技術マニュアルや規約▽第7艦隊旗艦が被弾した場合、被害を極小に留め、艦を最大限安定させるダメージ・コントロールの技術水準▽強襲揚陸艦/戦闘機/巡航ミサイル/軍事衛星/新型機雷に関する資料…などを写しまくる。

 小欄は、対ソ潜水艦作戦司令部で入手した海底固定聴音機(SOSUS)の設置位置などを網羅した情報に興味をそそられた。SOSUSは、敵味方水上艦/潜水艦のスクリュー音を集める目的で海底に仕掛けた、集音マイクのような機器。スクリュー音は集音→蓄積→音紋化→分析される。結果、例えば、米攻撃型原子力潜水艦は、対米核攻撃という切り札を維持するため、海中に潜み続けるソ連戦略原潜などを気付かれずに追尾し、開戦直後に撃破できる。

 音紋は指紋同様、スクリューの形状・規模や研磨により艦ごとに千差万別。にもかかわらず、スクリューが発する泡の音などを材料に、音紋解析を驚くべきほど正確に行っていた米海軍の実力が、一味の情報でソ連海軍の知るところとなった。急務となった消音化には、精緻な研磨や微妙に折り曲げる高度技術の蓄積が不可欠だったが、日米などの一部企業が国家的財産として囲っていた。

家族巻き込み破滅

 ここでK氏が絡む。K氏が勤めた企業はソ連の要請で、禁輸対象であるスクリューの製造可能な大型工作機械を不正輸出。ソ連はこの機械を使い、原潜などのスクリューが出す泡=キャビテーションを減らし、スクリュー音を劇的に引き下げた(既に静粛性を向上させていたとの異説アリ)。

 甘い罠に絡め取られたK氏は恐ろしさの余り米国に亡命申請。CIA(米中央情報局)は聴取後、日本側に通報した。

 K氏に取材したのは、桜の名所として名高い都内のホテルだった。事前の取材交渉は慎重を期した。東京西部の自宅マンションをアポなしで初めて訪問、真っ先に小声で尋ねたのは「玄関先で話せるのか」。K氏は見込み通り「家族思い」だった。以降、家族には記者であることを伏せ、取材の説得に向け数回、近くの公園などに呼び出した。K氏は深く後悔する生身の人間に見えた。

 ウォーカーは悪魔だった。海軍々人の末っ子に情報を盗ませた非道は述べたが、当初末っ子は高校を中退していた。そこでウォーカーは、退役後開業した私立探偵事務所で、末っ子にスパイのイロハを学ばせる。続いて、海軍入隊を視野に復学させ、卒業証書を取らせた。末っ子は子供4人の内、最も父を慕ったというから哀れ。しかも、末っ子のリクルート以前に、米陸軍々人の末娘を引き込もうとした。ところが、末娘が妊娠→結婚、家庭に専念したことで狙いを末っ子に替える。

ウォーカーは結局、家族を巻き込み破滅する。離婚した妻が子供の養育費を全く払わず、長女まで海軍に入隊させようとした蛮行に憤激し、FBIにタレ込んだのだ。

 ウォーカーは兄とともに終身刑になるが「完全自白」と終身刑を受けいれる代わりに末っ子の減刑を要求。末っ子は懲役25年(2000年に仮釈放)で済む。もっとも「完全自白」には、上級曹長の罪状を重くする証言も含まれた。上級曹長は2048年まで仮釈放のない懲役365年を受ける。ウォーカーは仮釈放を来年に控えてこの世を去ったが、天の配剤だろうか。

「最高の赴任地」ニッポン

 ところで機密保持について当時、米海軍はらしからぬミスを積み重ねた。一つは情報収集艦が1968年、北朝鮮軍の攻撃を受け拿捕されたケース。その際、KW-7暗号機が没収され、ソ連に送られた。だのに、国防総省の諜報機関・国家安全保障局(NSA)は機器と規約を一部変更しただけで使い続ける。変更内容はウォーカーがソ連に提供し、既述した米海軍電報100万通解読に大いに貢献。ベトナム戦争(1960~75年)でも苦戦を強いられた。さらに末っ子は空母において、(丸秘)文書が入った焼却袋を作戦室奥の空調焼却室に相互監視もなく、一人で持っていく任務に就く。また、作戦室備え付けの艦内電話帳に記された、(丸秘)文書保管金庫のダイヤル番号を見つけてもいる。

 米国はスパイ事件の度に学習し対策を講じてきた。ウォーカーは事情聴取に「大型小売店Kマートは、米海軍以上に良い保安態勢も持つ」とうそぶいたが、スパイ防止法もなく、特定秘密保護法にも批判が起きる日本は、スパイが熱望する「最高の赴任地」であり続ける。(政治部専門委員 野口裕之)

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米メリーランド州ロックビルの拘置所に入るジョン・ウォーカーJr.受刑者。家族らを巻き込んでスパイ行為を長期間行い、「米史上最悪のスパイ」と呼ばれた=1985年8月15日(AP)



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